優秀賞(審査委員会特別賞)
グループ紹介
グループ名 | 東白川村・災害時要援護者避難支援プロジェクト |
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市町村 | 岐阜県東白川村 |
想定災害 | 土砂災害 |
グループ構成 | 県土木事務所、村役場、診療所、社会福祉協議会、NPO、地域住民 |
マップ名:「東白川町・避難支援マップ」
※ 地図は非公開です。
グループ概要
東白川村は岐阜県東部、美濃三河高原に位置し 標高1,000m前後の山に囲まれ、村域の90%を山林が占めています。 村の中央を東から西へ白川が貫流しており、白川とその支流沿いに集落が分布しています。 過去には豪雨災害や土砂災害がたびたび襲い、住民の記憶に鮮明に刻まれています。
- 8.17災害…飛騨川バス転落事故のあった1968(昭和43)年の豪雨災害
- 7.15災害…2010(平成22)年の集中豪雨による八百津町での土砂崩れ
- 9.20災害…2011(平成23)年、台風15号による豪雨災害、全村に避難勧告、村内の一部に土砂崩れ
住民の危機感は高く、これまでも自然発生的な助け合いは行われてきましたが、「誰が」「誰を」「どこへ」避難するかは明確になっていませんでした。平成24年度、村では災害時要援護者の個別避難支援プランを作ることこととなり、そこに岐阜県が土砂災害警戒区域の住民説明会を開きたいという意向が重なり、全村6箇所で住民ワークショップを開くこととなりました。
ワークショップでは、岐阜県加茂土木事務所より土砂災害(特別)警戒区域の示された地図の提供を受け、参加者および要援護者の自宅の特定、集落内の危険箇所と資源箇所のチェック、避難所および避難所への経路の確認、避難にともなう困難や新たな避難場所等の確保と協働などを話し合いました。住民ワークショップの成果は以下のとおりです。
- 集落ごとのワークショップ参加率は全世帯の3割から5割と関心が高かった。6回のワークショップを通して275名が参加し、全世帯の3割が参加した。
- 遅い時間のワークショップにもかかわらず、どの集落も熱心な議論が続き、時間を区切らざるを得ないほどであった。
- 随所で過去の浸水被害や土砂崩れ等の実際の体験が交わされた。
- 「太郎が次郎を見に行く」「花子宅を一時避難所にする」など、リアルな被害想定の下、住民ならではの個別具体的な対策が話し合われた。
- 村が把握する災害時要援護者以外に支援の必要な個人が特定され、特に稼働年齢層が村外に働きに出ていることから昼間独居になる世帯が明らかになった。昼間は限界集落になってマンパワーが足りないという現状が再認識された。
- 大雨や土砂災害の危険がいよいよ増してからでは避難行動自体が危険であることから早めの避難が必要であることが再認識された。
- 孤立集落になる可能性が高いことが確認され、ヘリポートの建設や通信・物資調達(備蓄)の課題も明らかになった。
- 住民の検討を受けて、村では指定避難所の見直し、ハザードマップの改訂、各集落にある集会場の施設や備蓄品の見直しを図ることになった。
- 9月1日(土)の総合防災訓練では、各集落の集会場への避難訓練(参集訓練)が全村で行われ、実際の避難経路等のチェックが行われた。
- 9月29日-30日、10月13日-14日には初めての避難所宿泊訓練が行われ、体育館への2次避難を想定した炊き出しやロープワーク、間仕切りの組み立て等、住民主体の避難所生活を体験した。
講評
災害時要援護者の避難支援を目的として、行政、社会福祉協議会、土木事務所、地元NPO、そして地区住民が協働して作成したマップ。ハザードマップに各集落の過去の被災体験や地域の具体的な課題などの地域情報を掲載することで、地域の実態を踏まえた、より実践的な対策につながるマップとなっている。協働の過程の取り組みではワークショップも行われ、マップを活用したリスク認知や具体的な対策の検討が行われている。
多様な主体による高い協働性の中で、ハザードにとどまらずリスクを共有することで、具体的な要援護者支援対策が検討されている点を高く評価した。