ゲリラ豪雨避難シミュレーションゲーム「Guerri Go Rescue」

防災マッシュアップコンテスト

第1回

受賞作品

作品紹介

アプリケーション名 ゲリラ豪雨避難シミュレーションゲーム「Guerri Go Rescue」
部門 アイディア
代表者 伊藤 可久さん

アプリの概要

 このアプリケーションは、私達が生活する空間をフィールドと捉え、フィールド上で発生する洪水や土砂災害から、住民達を的確な避難誘導によって救うシミュレーションゲームです。実世界の情報によって生成されるマップ上には、地形、リスク要因、人口などの情報がリアルに展開されます。住民を容赦なく襲う豪雨から、少しでも被害を低減させるために、緻密な情報分析と迅速な判断が必要となります。

防災に対する有用性

 防災のために様々な地図データが公開されていますが、道路地図や鉄道路線図と異なり、日常的な実用性には欠けるため、意識しなければ、閲覧する機会は作られにくい傾向にあります。本サービスの目的は、ゲーム性によってユーザの敷居を取り払い、そういった情報を目にする機会を作ることにあります。
また、「避難する側」に立たされる際、非日常的な事態に直面するため、パニックに近い状態に陥りがちです。そういった状況でも、少しでも自らの状況を客観視できる視点を養うことも、期待される効果です。

マッシュアップの導入方法

 ゲーム内のマップ生成と、ゲーム内の時間進行に応じたリスク発動の2段階で、データは使用されます。
マップは升目状に定義され、各パネルのパラメータ生成においては、河川や起伏などの地形データ、人口と土地利用のデータが利用されます。また、ハザートマップによるリスク要因の存在もアイコンとしてユーザに伝えられます。
リスク発動はゲーム進行によって、マップ上のリスク要因が降雨状況に応じて発動するものです。

アピールポイント

  1. 「お堅い」防災データを、ゲームスコアによる定量化でわかりやすく。
  2. 実空間データを利用したマップ生成による、生活空間に対する注意喚起。
  3. 避難誘導を無視する住民の存在を見て、いざという時そうならない。

作品について

 このゲームは、ユーザが市長のような視点に立って、街を襲うゲリラ豪雨から人々を救い、少しでも人的・物的被害を低減するゲームです。1人向けプレイを前提とし、各被害の発生によって減点方式で決定されるスコアの向上を目指すものです。
 ユーザはまず、プレイするエリアを選択されます。これは架空の都市ではなく、いずれも日本国内の実在の都市で、特にユーザが住んでいたり、日常的に訪れる都市 が強く推奨されます。また、ユーザの位置情報が利用可能な場合は、強制的にそのポイントを中心としたエリアに決定されます。
 都市選択後、ゲーム内 ではマップが生成されます。マップには、先述のように地形データと都市利用データが利用され、また都市に点在する洪水・土砂災害リスク情報も表示されま す。ゲーム内ではターン性の独自の時刻形態を持ち、プレイ開始から時計が動き始め、やがて時間の進行に従って、都市を激しいゲリラ豪雨が襲います。
 ゲリラ豪雨によって発生する被害は、ハザートマップ上のリスクが降雨状況と、ゲーム内の乱数判定によって、突如発生します。ユーザは降雨状況と地形、土地利 用を鑑みながら、適切に対処する必要があります。なお、特に物的被害の発生は、よりゲーム性を高めるため、高確率で発現するイベントとして設定されます。
プレイヤーが都市に対して可能なオペレーションには「コスト」が設定されており、プレイヤーは各ターン内で一定のコストの範囲内で、以下のような操作を行うことが可能です。

オペレーション例

  1. (平常時)防災意識を高める活動をする
  2. (平常時)排水設備の点検をする
  3. 地域に係員を派遣する
  4. 防災無線で情報を提供する
  5. 避難勧告を出し、避難先を指定する
  6. 避難指示を出す、誘導先を指定する
  7. 救助隊を派遣する

 最終的に豪雨が過ぎ去ればゲームは終了となり、1プレイの所要時間は長くありません。そのエリアに対しての知識が深まるよう、繰り返し同じマップでプレイすることが基本的なサイクルとなっています。

講評

 災害時対応をシミュレーションできるゲームは数多く存在するが、リアリティを重視し、そのエリアに対する知識を深めることができるよう、現実世界の情報 (地形、土地利用、災害リスク情報等)をマッシュアップして仮想世界(フィールド)を生成していること、その中で平時の事前対策も考慮しているということ を評価した。個人のみならず、学校や地域コミュニティで楽しく防災意識やスキルをアップさせることが出来る可能性がある点も評価できる。ただし、ゲームと してのリアルさとシンプルさをどのように同居させるか、また災害リスク情報として具体的にどういう情報をどのように使用するかなど、アイディアとしてより深く具体的に検討・表現できる点があると考え、今後のより深い発展を期待して、審査委員会特別賞として奨励賞を贈呈することとした。