かつと2号

防災ラジオドラマコンテスト

第2回

<ドラマ部門> 最優秀賞

グループ紹介

グループ名 かつと2号
市町村 神奈川県横浜市
代表者名 東海林俊治さん

作品紹介

タイトル 「お助け隊出動!」
部門 ドラマ
災害種類 地震
ファイル 脚本(PDF) 音声(mp3)

ドラマの概要

 あらすじですが、主人公は79歳の高齢で5年前に妻に先立たれ、心筋梗塞の持病を持つ独居老人。大企業の部長職で退職し、何かにつけて過去の栄光を引きづり、地域になかなかなじめない孤高で少し頑固な性質の高齢者です。
 なぜ、おばあちゃんでなく、おじいちゃんなのか?
 女性は元来、社交性には富んでおり特に結婚後くらいから井戸端会議、趣味や子育てを通して、また様々なイベントなどに参加することで、地域にスムーズに溶け込んでいきます。ところが男性は退職までは仕事やその付き合い等で、地域で過ごす時間が少ないし、また退職後は過去の栄光はかなぐり捨て、裃を脱いで地域に溶け込む努力をしないと、主人公のような高齢者になりかねないと思います。
さて、主人公は自治会の会合や祭り等のイベントにも出ないので、地域に友人が少なく、いろいろな情報に疎くなります。自分のことは自分で守るとかたくなになるので、自治会や近所の人たちもだんだん批判的な態度で接するようになります。
 そこへ大地震が起きます。これまで経験したことのないようなひどい揺れに、主人公の独居老人は気が動転し、そのショックで持病の心筋梗塞が悪化し倒れる。役員が急遽集まった集会場では主人公のことが話題になり、彼から安心電話を受けた民生委員がやってきます。
 そこで様々な意見がでるなかで、自治会長は決断を下します。「いろいろ批判もあるでしょうが、今こそ共助の力を発揮すべき時ではないでしょうか!」とお助け隊長の高校生を13階の彼の家に救出に行かせる。そして救急車が到着するまでAEDを使って心拍蘇生に成功し、救急車に引き渡します。このお助け隊長の高校生は、中学生のころはやんちゃでつっぱりな一面があり、主人公からもよく注意されていました。「最近の若いもんは捨てたもんじゃないなー」と主人公は言います。
 数日後奇跡的に回復した主人公は、自治会を訪れ役員やお助け隊長の高校生達に感謝します。そして、「世の中は独りでは生きていけないことを、あらためて実感した」と反省の弁を語ります。今後は出来るだけ、自治会の会合やイベントに参加して、地域に溶け込みたいと言います。

ドラマの特徴

 「大地震発生時に、高層マンションに住んでいて、心臓に持病があり地域活動に溶け込もうとしない独居老人が倒れ危ないところを若者で組織されたお助け隊に助けられる」というシンプルなあらすじである。
まずこのドラマのアピールポイントは退職後なかなかスムーズに地域に溶け込めない高齢者でも、緊急災害時には共助の精神を発揮して助け合っていこうと言う事です。そして地域の中の一番身近な住環境の中で、お互いに快適な生活が送れるように、日頃からコミュニケーションを密にして、防災についても理解を深めていこうということです。次に、このドラマを通じて地域に伝えたいことは、緊急災害時に最もハンディキャップのある高齢者(特に独り暮らしや持病を抱えている人)や子供達を如何に迅速に安全に避難させるかということです。
 それにはまず日頃から住民同士のコミュニケーションを密にして、いろいろな情報を共有する事です。そして「自助から共助」の精神を発揮しやすい環境を作り出すことが肝要だと思います。
このドラマで一つの形として「お助け隊をとりあげましたが、少子化の時代、若いものにもそうした環境づくりに一役買ってもらう事も必要なことだと思います。「今の若者は・・・」と言われがちですが、大人が彼らに分かりやすく誠実に対応すればきっと理解されると思います。

講評

 高校生で構成されたお助け隊と地域の高齢者とのコミュニケーションを軸とした物語で、人々のしがらみや葛藤という理性だけで解決できない部分を良く捉え、学生の地域貢献向けた姿勢に踏み込んでいる点が評価できる。都市に多い高層マンションの独居老人に関する課題が巧みに表現されており、高校生によるお助け隊といった新たな地域活動の取り組みや、安心電話、AED など、災害時の具体的な対策が表現され、学生が民生委員と協力しながら高齢者などの要援護者を助ける容は、今後の新たな地域防災活動につながることが期待される。
 本ドラマで登場するお助け隊は、地域を巻き込めるたたき台として、平常時から災害時への発展性を内在し、災害時だけでなく平常時の社会活動としての活動が期待でき、当ドラマを土台に、防災資源としての高校生と、消防団や民生委員などの連携性、役割分担を見直すきっかけとなりえる。作成過程において、さまざまな地域関係者が関与している点も高く評価される。効果音の使い方、声優の話し方など、ドラマとしても完成度が高い。今後このドラマをきっかけにして、地域のさまざまな主体を巻き込んだ防災の見直しにつながることを期待したい。